毒と蜜と花

 

「おい、ちょっとこっちに来い」
七島を超えた先で休憩をしていたときだった。ムシたちを散らしてどうにか進み、落ちついたと思って座り込んでいたわかばにりんが声をかけてきた。
「あ、はい」
若干憂鬱な表情を浮かべたわかばを、りんはじろっとにらみ付け、わかばは慌てて側に近寄っていった。
「な、何でしょう」
「あれ、確認するぞ」
「……う、分かりました……」
わかばはかくりと項垂れて、大股で歩くりんの後についていった。りつやりな達が居る所から少し離れた物陰に移動すると、わかばはもはや慣れたもので、りんに背中を向けて膝を抱えて座り込んだ。
りんは座り込んでわかばの体に腕を回して探るように体に手を這わせた。
「――はぁ」
わかばの胸に手が触れ、おそらくりんが出来る範囲でかなり優しめに動き、わかばは息を吐いた。
ここ最近、これをされるとどうもおかしくなってくる。
わかばは気を紛らわすために何か他のことを考えようと記憶を遡り始めた。

「なあわかば。ここのこれ邪魔なのナ」
ケムリクサをいじっていたわかばの膝に乗ってきたりなじは、不満げにわかばの胸元に頭を乗せた。
どうやらわかばの膝に座るとどうしても頭が胸にあたり、膨らみが頭に当たることを言っているようだった。
「これなんであるのナ?」
「なんでって……元からついていたものですし……」
わかばはうーんと呻いて答えに窮した。
「りなじたちは無いナ。りつ兄やりん兄にも無いな」
「そういえばそうですね。性別……の違いとかでしょうか」
わかばの言葉にりな達は何それ、と首を傾げた。
「わかばの言っている事よく分からないナ」
「すみません、僕もよく分からないんですけど……」
わかばの言葉にりなじは体をわかばの方に向けて胸に手を当てた。
「というか、この感じの、前りく君がりなぞうから取り上げていたのと似てないかな」
「似てる似てる」
「ふわふわとか言ってたな」
「じゃあわかばのもふわふわなのナ?」
「りく君じゃないからわからないナ」
わかばはくすぐったそうな顔をして
「あの、あまりそこを触られるとちょっと……」
少し恥ずかしそうに咳払いをするわかばに、りなたちは首をかしげた。
「なんで?」
「くすぐったいので……っ」
顔が赤くなるわかばに、りな達は不思議そうな顔をした。
「りく君と同じな」
「りな、あまりわかば君をからかっちゃダメ」
運転席から顔をのぞかせたりつはりなたちに少し低い声でたしなめた。
「はーい」
りなたちは返事をして手を挙げ、わかばから離れた。
「ごめんね、わかば君」
「いえ、やっぱり、気になりますよね。僕、皆さんとはなんか違うし……」
わかばの言葉にりつはそうだねーと頷いた。
「りょく君が何か言っていた気もするけど。私たちが男というタイプで、そうじゃないタイプがある、とか。わかば君の事なのかな」
「……どうでしょう。よく、分からないです」
すみませんと謝るわかばに、りつは手を振り、
「じゃあ、試しにそれの音を聞いてみてもいいかにゃ。特に変な音がしなければ気にするような話でもないって事だし。りんも納得し
てくれると思うにゃ」
「ああ、そうですね。お願いします」
りつはわかばの胸に手を当て、うーんと首を傾げた。
「心臓の音はするけど……特に何もなさそうだにゃ」
大丈夫大丈夫、と元気づけるようにわかばに言うりつに、わかばはほっとしたような表情を浮かべた。
「近くにムシはいなかった……って何やってるんだ」
わかばの周りに集まっていたりなとりつに、りんは問いかけた。心なしか、若干不機嫌そうにわかばをにらみつけている。
「わかばのこれ邪魔だって話してたんだな」
「わかばしか無いのなんでだろうなって」
これ、と指さされた胸に思わず苦笑いをするわかばをりんはじっと見やった。
「あまりそいつに近づくな。それこそ、毒をばらまいて」
ふと、りんの表情が険しくなりじろっとわかばを睨みつけた。
「まさか俺たちと体が違うのが毒を撒いている原因か……?」
「え、えええっ! 違いますよ! ていうか何ですか毒って?」
「考えすぎだと思うにゃー。別に何も音しなかったし」
「……いや、でなければこいつのせいで――になる原因がわからないし……。やっぱり少し調べてみないと……」
「ひえ」
調べるという言葉にわかばの顔が引きつる。
「気にしすぎだにゃりんは……。ヌシを倒せたのだって、わかば君のおかげだし……今のところ問題ない、んだよね?」
「それは……そうだけど」
りんは不服そうではあったが、りつの言葉に一応は頷いた。
わかばは少し考えた。このまま、りんの中にわだかまりが残るのはあまり良いとは思えない。納得してもらう方が良いのではないだろうか。
「あの、りんさんが……調べて納得できるなら、僕は全然構わないので……」
わかばの提案にりんは少し考え、そうかと呟いた。
「なら、行くぞ」
「え、ここでも良いんでは……?」
「仮に毒をばらまかれたら兄さん達が危険にさらされるだろう」
「あ、なるほど……」
体を抱え上げられて、わかばはそのままりんに抱えられたまま乗り物の外に連れ出された。まるで荷物か何かのようだ。りんはわかばを見る事無くまっすぐ進み、とある廃墟の中に放り出された。
情けない声を上げて起き上がるわかばを、りんは不機嫌そうに見下ろし
「……とりあえずその……膨らんでるやつ? 取って見せろ」
「え、無理ですよ。体についているので」
「じゃあそれを見せろ」
若干いらついたような口調で言われてわかばはひえっと首をすくめ、少し躊躇ってから上着に手を掛けてまくり上げた。インナー越しでも胸の膨らみが体の一部である事は分かるはずである。りんは怪訝そうな表情を浮かべてわかばを見つめた。瞳の色がうっすら緑色を帯びて、何か浮き上がってくる事を期待するようにしばらく見つめていると、恐る恐るという手つきでわかばの胸に手を這わせた。
「ひっ……」
指先で触れたそれは自分とは違い、わずかに触れた面が少しへこみ、離すと元に戻った。このような動作をするのはりなたちが寝るのに使っている丸いものと似ているようだった。ぐにぐにと揉んでみるが目に見えて何か変化は見えなかった。
りくならこれの触感から何か気付く事も出来るのに。
りんはふと脳裏に浮かんだが、すぐに打ち消した。なんとなく、仮にりくがいたとしてもこれをりくにやらせるのは気が進まなかった。よくは分からないが。
「あの……もう、いいでしょうか」
わかばの声にりんははっと我に返り、わかばの顔に目を向ける。
「お、まえ……どうした……?」
ぎょっとしてりんはわかばから手を離した。膝から崩れ落ちるようにわかばは座りこみ、肩で息をしてりんにごめんなさいと呟いた。
顔は赤く、口元は唇を噛みしめていたのか傷が出来てうっすら赤いものがにじんでいる。目尻の涙にさすがに罪悪感を感じ、あたふたとわかばの目の涙を不器用に指先で拭った。
加減することが出来ないりんの力で拭われ、わかばの目元が赤く色づき、りんは更に狼狽えた。
わかばは思わずふっと笑みを浮かべ
「りんさんでも慌てる事あるんですね。済みません、もう大丈夫です」
答えてわかばは立ち上がった。
「ちょっとあの……体の奥が熱くなると言うかズキズキして、頭が真っ白になってしまって……」
「それは……」
りんは思わず自分の持つ葉に触れた。少なくとも今はそこまで毒が回っているような気配は無い。不思議に思ってわかばを見やると彼女は首をかしげて
「あの、りんさん。もう調べるのは、良いですよね……?」
「え、あ、いや」
りんは少し考え首を振った。
「今日はとりあえず良いが……どうなるか分からないからまた調べる」
「そ、そんなー……」
がくりと肩を落とすわかばを再びひょいと抱え上げ、りんはりつ達の元に帰るために歩き始めた。

「一応異常はなさそうだな」
唐突にりんがつぶやき、わかばは思わずびくっと我に返った。
「どうした?」
「え? あ、えーっと何でも無いです!」
わかばは手を振り慌てて立ち上がった。若干ふらつくものの、もたもたしているわけにも行かなかった。歩き出そうとするわかばを、りんはひょいと抱えあげて歩き出した。
「お前、その……これをされるのは、嫌か」
思いがけない言葉にわかばは数回瞬きしてりんを見返したが、抱えられている状態ではりんの顔はよく見えない。そもそも顔をこちらに向けてくれることがあまりないが。
「いやというか……りんさんにとって大事なことなら仕方が無いことなので……」
「……そうか」
一瞬何とも言えない不思議な表情を浮かべてこちらをちらりと見たりんに、わかばは何か言おうと考えたが、
『二人とも、まだかかりそうにゃ?』
遅い二人を心配してりつがミドリの根を使って様子を確認してきた。耳がりんの方に向いてパタパタと動いている。
「いや、すぐ戻る」
根に触れてりんが報告するとわかったにゃーとりつの耳がすうっとまた移動していった。
「りんさん?」
「……この先はもっと危険になるから、あまり離れるな」
「え……あ、はい」
思いかけない事を言われてわかばは一瞬虚を突かれてわかばは思わずきょとんとりんを見やった。相変わらず表情はよく見えなかったが、どうやらそこまで嫌われていないのかもしれない。
もし少しでも、嫌われていないのであれば嬉しいのだが。

わかばはひんやりとしてきた空気に無意識に腕をさすっていた。
船の中も広かったが、外に広がる世界は更に広く、どこか静かだった。
赤い木の機能を停止させてから、りつとりなとともに外に出た一行は、しばらく周囲を観察してから湖の側にいったん落ち着くことにした。
七島でもほっとした時間を過ごせたが、あのときとは違いもう赤い木も存在しない。
これからどうしようとかと輪になって考えながら四人はその日の残りを過ごした。何しろ水がなくなる心配も無く、広い世界にはりつが聞こえる範囲で夜になり、三人が眠り始めると、わかばは彼らを見守りながら残っていたケムリクサを弄りながら、これからのことを考えていた。
ふわりと風が吹き、わかばは思わずくしゃみをした。
思いの外寒い。
わかばは触っていたケムリクサを横に置いて膝を抱えて小さくなった。外に出てすぐは、はしゃいであちこち走り回っていたりつやりな達も、水をたっぷり取って落ち着いたのか、寝返りも打たないほど眠りこけていた。あれだけ大変だったにも関わらず、わかばはそこまで眠いと言うことは無く、ぼんやりと座り込んで夜の外の世界を眺めていた。
「……おい、寝ないのか」
いつの間にか起きたのか、りんがわかばの側に座り、問いかけた。
「はい、りんさんこそ、まだ暗いですよ。もう少し休んだ方が」
「もう十分休んだ。水もあんなに取ったからか調子も良いし」
キイロのほのかな光に照らされたりんの表情は、穏やかで眉間にいつも出来ていた皺も無くなっている。
こんな顔だったんだ――
わかばはまじまじと見つめそうになり、さすがに失礼かと考えてすっと視線を外した。
「……その、お前と少し……話をしたいと思って」
いいか、と聞かれてわかばはもちろんと頷いた。
りつやりな達が眠っている場所から少しばかり離れた場所で並んで座り、そのまま沈黙が降りた。
話したいと言われたものの、わかばは何を話せば良いか考えを巡らせたが良い物が浮かんでこなかった。いやそもそも、あの崖で言われたことを思い出して、わかばはまっすぐにりんの顔が見る事が出来なかった。
好きだと言われてしまった。今まで見たことが無い笑顔で。
りんも話をしようと言ったきり、何か考えているのか言ってこない。

ふと、ふわりと風が吹いて、わかばはくしゃみをして腕をさすった。
「? どうした」
「いや、ちょっと寒いかなって……」
「寒い……?」
りんは寒い、という言葉を口の中で呟いて少し考え、
「ちょっと待て」
りんはわかばを抱えて、後ろから抱きかかえるようにして腕を回してきた。思わず、いつもの調査かと思って反射的に身を固くしたが、しばらくしても特に何もされない。
じんわりとりんの体から熱が伝わって、わかばは思わずほうっと息をついた。
「これは……いや、か?」
「え? ええっと、そうじゃなくて……あの調査、するのかと思ったもので」
「……ああ」
りんはなるほどと頷いて寒さで鳥肌が立っているわかばの腕をできる限り優しく不器用にさすった。
「あのとき」
「はい?」
りんがぼそっと呟いた声にわかばは首をかしげて後ろのりんを見やった。
「その、調べたときに……体が熱いと言っていたが……」
「え、あ……、はい……まあ」
「今は何も無いのか」
問いに、わかばは黙り込んだ。なんと言えば良いだろうか。
「……えーっと」
わかばは視線を彷徨わせて何か言うことは無いか考えた。そしてふと、暗がりにキイロ以外に光る物に気付いてりんの方に体を向けた。
「あ、りんさんの本体の葉……」
「ああ」
無造作に体から出してわかばに見せたりんに、わかばは思わず目を見張った。本体の葉が生命線の彼らにとって、それを自分に安易に見せると言うことがどういうものか。
わかばは恭しくりんが持っている葉にそっと指を這わせてみた。マゼンダ色の光が更に強く光り、わかばはほうっとうっとりと息を吐いた。
「……本当に好きだな」
「綺麗ですから……、それにこうして間近で見せてもらえるというのが、何というか……」
わかばの言葉にりんは、曖昧に頷いて少し考え込んだ。
「……お前なら、多分出来ると思うんだが……」
「はい?」
「いや、記憶の葉の事で思い出したというか……記憶の葉も私たちの葉もりりから抽出された物だ」
「はい」
「記憶の葉が操作できるなら、この葉も操作できるのかと……」
「ああ、なるほど! それは確かにそうですね! ありえそうです」
「私ではあまり正確な操作はできないから……試せないか」
「……い、良いんですか!?」
「……ああ」
りんは少し照れたような表情を見せて葉を体に戻した。わかばは目を輝かせてりんの体に向き直り、腹部をぐっと押した。
記憶の葉と同様、ふわりと操作パネルのような表示が浮かび、わかばはうわあっと歓声を上げた。
「うっ……」
ぞくりと何か得体の知れない感覚が走り、りんは思わず呻いた。
「ああ、済みませんりんさん……大丈夫ですか?」
りんの様子に気付いたわかばは、思わず手を離してりんを見つめた。
「あ、ああ。何というか、りくが言っていたような感覚? があったような」
「肉体的な記憶が本体の葉に記憶されているのかもしれないですね……興味深い……と言うことは、りんさんの葉を起動したら何らかの感覚が戻るかもしれないですね」
興奮してやや早口でまくし立てながら、わかばは再度りんの腹に指を這わせてパネルを操作してみた。何度か弄ったところで、かちっと成功した音が響いて葉が勢いよく回転しだした。
「ど、どうですかりんさん? 何か変化は」
目が輝いてわくわくとした表情でりんに前のめりに問いかけるわかばに
「いや、何というか……これは」
りんはよりクリアに聞こえてきたわかばの声や、周りの草のにおいに圧倒されて思わず頭を押さえた。
「音や匂いが分かる……」
「ほ、ホントですか? すごいなあ」
「お前の声がやけによく聞こえるし、それにこれは……」
「へ?」
わかばの首元に顔を埋めて抱きかかえるとりんは大きく息を吸い込んだ。
「何か……懐かしいような……匂いがする、お前から」
「ああ、りりさんの記憶……とかからですかね。僕の元の……誰か? に絡んだ記憶で」
「さあ……まあ、どうでも良い」
りんはグローブを口で外してその辺に放ると、わかばの体に手を這わせた。
「うへぁ、り、りんさん、あの……」
「手で触れるというのはこういう事か」
わかばの髪や頬、唇に触れてりんはほうっと息を吐いて呟いた。
「肌に直接触って良いか」
覗き込むようにわかばを見つめるりんの表情にわかばは狼狽えた。今までは目を合わせてくれることもそんなに無かったのに、何か……体に穴でも開きそうだ。しかも、何故だろうか。見られている間に体は熱くなってきて、鼓動が早くなってきた。
「えーと……」
わかばは一呼吸分考え込んでから、こくこくと頷いた。
思いの外、優しい手つきでりんの手が服の下のわかばの肌に触れて、わかばはこそばゆさから笑い声のような喘ぎのような声を上げた。
「り、りんさん、ちょっとくすぐった……ひっ」
りんの指先がわかばの胸まで這い上がって思わずわかばは悲鳴を上げ、びくっと体を震わせた。
りんは柔らかな感触に少し瞬きしてわかばを見やった。
「ど、どうかしました?」
「なんて言うか、感触が……」
わかばの腕や体と自分の体を見比べ、触れてりんは首をかしげた。
「りくが言っていた、柔らかいというのはこういう事なのかと」
以前のような調査と違い、指先で皮膚のさわり心地や、自分とは違う柔らかな感触を味わうようにりんの指が這い、わかばはすがりつくようにりんの服を握り混んだ。
「……悪い、その……大丈夫か」
肩で息をするわかばにりんは、心配になったのか手を止めてわかばの顔を見つめた。
「あ、だ、大丈夫ですので……どーんと、りんさんが満足するまでやっちゃってください」
わかばの言葉にりんは、わかったと頷いてわかばを地面にゆっくりと横にし、わかばの体の上に覆い被さった。
りんは、どうした事か体が動いてこの後する事をぼんやりと把握しているような気分になった。わかばに聞いてみればもう少し細かい事が分かるのだろうが、感覚的に時間があまりない事をりんは察した。
わかばの服に手をかけ上まであげ、改めて調査で触れていた膨らみをりんは見つめた。記憶の葉で見えた映像以外にも、りりが持っていた知識の一部はどうやらりんの知識として記録されたのか、りんとわかばのその体の違いが性別による物である事は理解していた。手で、これまでとは違いできるだけ優しく触れると、柔らかな肌と弾力のある肉の感触が返ってきた。わかばの呼吸が荒くなってきて、りんは思わず問いかけた。
「今は、どんな感じだ? 熱い、のか? ズキズキするとか?」
「あ、熱い……です。あの……ここが……」
わかばの手が下腹部を指し、困惑したような顔でりんを見上げた。
「何でなのかが、分からなくて」
「どこら辺だ」
りんは少し躊躇うようにわかばの服の上から、漠然とここ、と指された場所へ手を這わせた。
わかばはかなり迷ったような様子で
「その……どう言えば良いか……」
「?」
わかばはそろりと足を開いて、足の間を指差した。
「見ても平気か」
「……はい……」
わかばは自分で服に手を掛けて膝までおろした。夜気と地面の草に素肌が触れて皮膚が粟立ち、わかばは大きく息を吸った。
りんは内股に手を掛けてわかばの体を開き、指差した場所を見つめた。性別の差が顕著に出るというそこにどうすれば良いのか。知識が朧気で漠然しているりんは少し考え。
兄が言っていた言葉に従う事にした。
「あの、りんさん……?」
足を開いた状態はさすがに恥ずかしいのかわかばはもう良いですかと問いかけた。
「ちょっとまて」
りんは言いながらわかばの体の中心に指を差し入れ、ゆっくりと入り口付近の内側をなぞった。
「え? ……あっ!」
わかばは未知の感触に思わず声を上げ、体を引こうと手をばたつかせた。
「り、りんさん、な、何を」
「いや、りくがよく突っ込んでみないと分からないと」
「こ、ここでっ?」
「間違ってなかったと思うんだが」
りんの指先が襞をなぞるように動き、わかばはその刺激の強さに思わず声を上げ、筋肉が収縮してりんの指を強く締め付けた。
「あっ! ――ッんぅ……んっ!」
要領を得てきたのか、りんは指を動かして中をほぐすような動きで愛撫し、わかばは自分でも聞いた事が無いような声を上げていた。やがてわかばの体から力が抜け、ぐったりと手足を投げ出すと、りんは指を抜いてわかばを見つめた。ベルトを外して、
「わかば、その……痛いかったら言ってくれ」
なるべく努力はするから、と耳元で囁かれ、わかばは霞む頭でどういう事だろう、と思いながらも頷いた。一瞬、かなり切羽詰まったような顔だったがりんの顔に笑みが浮かび、わかばは呆けたようにりんを見上げた。
「いっ……あっ!?」
直後に、りんの体がわかばの体にゆっくりと、確実に押し入ってきた。わかばは異物感と、自分の体に突き立てられたりんの昂りに目を見張った。
「ぁ……りんさ……」
わかばの体の中でゆっくりとりんが動き、感じたことの無いゾクゾクとした感覚に襲われたわかばは、思わず声を上げた。どこから出たのか分からない艶を増した声を、自分の物と気付いてわかばは顔を手で覆った。
「わかば……好き」
奥まで貫くように動くたび、りんはわかばの耳に好きと囁き、わかばは蕩けた頭でそれに答えた。
「僕も……好き……りんさ……あぁ!」
わかばの体が一際大きく震え、悲鳴のような声を上げてがくっと体から力が抜けた。りんはふと何かに気付いて、まずいと思わず呟いた。
「わかば……ちょっと……」
「あ……ん……」
陶酔して蕩けた顔をしたわかばをりんは何度か呼び、切羽詰まった声でわかばの手を取って自分の葉に触れさせた。
「わかば……葉が……もう一度起動出来ないか?」
「……葉……?」
わかばはたどたどしく指先でりんの本体の葉に触れて、何度かし損じたがどうにか葉を起動させた。再びわかばの熱を感じ取れるようになり、ほっと息を吐いた。
りんは再び、今度は気が急いて少し強く腰を動かした。
わかばの体が跳ね、強い刺激に思わずすすり泣くような喘ぎを上げた。体が触れる音と水音のような湿った音が響き、わかばは再び押し寄せてきた快楽に身を委ねて体を張り詰めさせ、声を上げた。
ため息ともつかないような声を吐き、りんはわかばの中に熱い飛沫を注ぎこんでいた。

どのくらいその場で寝転がっていたかをぼんやりと考えながら、わかばは夜空を見上げた。
船の中には無かった無数の光を見つめていると、橫に寝ていたりんが身じろぎして起き上がった。
「……平気か」
「はい」
見上げるりんの、本体の葉はいつもと同じように体の中でほのかに光り、回転は止まっていた。
「もう感覚は……?」
重い体をどうにか動かして、わかばは起き上がった。
「ああ、いつも通り」
寒さもさっきみたいには感じないなと、りんはわかばにジャケットを着せながら答えた。
「これも、ですか?」
りんの頬に触れて問いかけるわかばに、りんはそうだなと頷いて、わかばの手を取った。
「少し、残念ですね」
「葉を起動させればいいから、別に問題は無い、かな」
「じゃあ、また起動させましょうか?」
わかばはりんの体に触れて問いかけたが、りんはいや、と首を振った。
「もうすぐ明るくなるみたいだから……良い」
「? え、明るさ……?」
何故? と首をかしげるわかばにりんは思わず赤面して顔を背けた。
「その……感覚があるとつい、色々と……」
「あ、あー……。えっと」
わかばもりんが何を言いたいのか気付いたのか、慌てて整えた服を指先で握りこみながら赤面した。
「暗くなったら、頼めるか」
りんの言葉にわかばはかなりたってから頷いた。