ワードパレット -No.20- 手紙、忘れ物、飛ぶ

りりは試しにもらった一葉の橙に文字をしたため、書き上げた文章を見直した。使い方はわかった?と問うワカバに、りりは凄いねこれ、と言うと彼は嬉しそうにそう思う?りりは賢いねと言った。何を書いたのと問うワカバに内緒だよと言うと、ワカバはそうなんだ、と少し残念そうな表情を浮かべた。本当は後でヌシッちにお願いして渡そうと思っていた橙で初めて書いた手紙のようなものを、りりはポケットにしまい込んだ。

あの時直接渡しておけば良かっただろうか。渡す相手が居なくなったそれは霞む体と意識と一緒になって分解されさらさらと端の方から崩れて飛んでいってしまっていた。