たゆたう手紙

船体底部のデータプールに転送された事を確認してワカバはひとまず成功だなと頷いた。まさかそこに、りり自身を分割した姉妹?が居たのには正直頭を抱えたけれど。あの聡い子ならリスクを理解した上で、きっとやるだろうし、やった結果は目の前にいた。やっぱり気が動転していたのだろう、あの子にとっての時間と自分の時間は違うという基本概念すら忘れていた。
ハ イ ケ イ、 ワ カ バ サ マ
データプールの海の中を歩く自分の周りを彼女とともにここに流れ着いた何かの影響かキラキラと彼女の居るだろう方角から橙色の葉の欠片が流れてくる。
イ ソ ガ シ イ ノ ニ

オ シ エ テ ク レ テ ア リ ガ ト ウ

初めて橙の葉を渡して使い方を教えたときに、何か隠れて書いていた事を思い返す。
これは何だろう。
四人で拾い集めながら、考えてみるが結局本人に聞かないと分からないね、と話は決まり、流れてくる葉の先を目指して歩き続ける。

ズ ッ ト イッショ ニ イ ヨ ウネ

欠片の流れる密度はやがて小さくなり、とある抽出した建物から流れていた。
書かれている内容はいつも彼女が言っていた当たり前――あのときは当たり前だったことが書かれていた。わざわざ文字に起こしたのは何故なのか、それが地球の人のやり方なのか。聞きたいことはたくさんある。
啜り泣きと謝罪の言葉が聞こえてくる建物の中へ、ワカバと姉妹達は足を踏み入れた。