姉の耳は風にぴくりと揺れて向きを変えた。今までなら何か警戒が必要な物を探していると思ったが表情を見るとただ漫然と音を聴いているだけのようだ。声をかけると目を開けてこちらを見上げてきた。さわさわとミドリが風に葉を揺らしている。
「水が一杯だとこんなにすぐ大きくなるのニャ」
顔色の良くなった笑みにつられて笑うと姉はこんな日が来るなんてね、とポツリと呟いた。
姉さんとりなのおかげだよと言うと、姉は照れた様に微笑んだ。ぴくりと姉の耳が何かに気付いて
「あ、わかば君こっちに来るニャ」
りんは思わず振り返り、姉にまだずっと向こうニャと呆れられた。
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2019.9