ワードパレット -No.3- 別れ、香り、声

りんはふと気付いてわかばに目を向けた。
「わかば、時々変わった匂いがするな」
「え、すみません、臭いですか」
「いや、甘いような…臭いとかではなくて」
「甘い…ああ…伯父の煙草かな?最近帰ってきたから移ったのかも」
外国の煙草とか吸ってたりするんですよ、とわかばは言った。家への分かれ道で少し立ち止まり、どうでも良い話をして時間を引き延ばす。
それでも結局日は暮れてしまうので、お互いまた明日と手を振る。名残惜しいのは自分だけ、なのだろうか。振り返って分かれ道を見ると、まだそこに立つわかばに気付く。笑顔で手を小さく振って歩き去る彼を眺めて、少し軽い足取りで踵を返して歩き出した。