ぱっとわかばが手首を返すと持っていたはずの硬貨が消えた。
「どうやったんだ?」
「タネは簡単です」
こうやってと器用な指と手首の柔らかな動きを見せられ、硬貨が流れるように袖口に消えると、りんは首をかしげた。
「よく覚えたな」
恥ずかしげにわかばは頬を掻いて
「倫敦は白浪が多い物で……僕なんぞはよくこういう小手先の手品に騙されるからと友人達が色々教えてくれたんですよ」
「学者よりも稼げるんじゃないのかそれの方が」
「人前に立つのは好きじゃないです。一人のためにお見せするとかならまあ……」
いつの間にか袖口から出したのか、先ほどのコインをりんの手に乗せてわかばは照れたように笑った
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2019.9