ワードパレット -No.18- おはよう、ワルツ、靴


ノックをしても出ない相手にりんはまたか、とため息をついてノブを回して中に入る。床に伸びている相手を軽く小突くと呻き声とともに顔を上げてりんを見上げる。最早朝の挨拶のような恒例行事だった。彼は靴音でそうだと思ってたと言いながら起き上がり、徹夜明けのおかしな高揚感からか、りんさんの歩き方は三拍子でワルツを踊ってるみたいですよねと嘯いた。変な誤魔化しをするならちゃんと寝ろとソファに足を払って沈ませると、寝ぼけているのか手を伸ばしてきた。こんな時でないとこういう事をしてこない男に、りんは本当にどうしようもない奴だと伸ばしてきた手に応えながら呟いた。