ワードパレット -No.21- 檸檬、視線、跳ねる

その店を知ったのは夏の一番暑い頃で、熱中症になりそうだと思ってよく分からず手近に飛び込んだ店だった。もう何度目か、中に入ると店番の青年は笑顔を向け、カウンターに座ると今日のおススメです、と一杯のコーヒーと、レモンのタルトを出してきた。
殆ど貸切の店内で他愛無い話をして帰ろうとすると来週は休みだと告げられた。メニューを考えるためにカフェ巡りをするという彼は少し照れた表情で時間の都合が合えばどうですかと問われた。心拍数が跳ね上がり、二つ返事で了承していた。