目が覚めると兄が見下ろしていて、おはようと撫でられる。おやすみと声をかけて起き上がる。明けの夜空は弟の目覚めと共に白んで来て、兄は入れ替わるように寝床に潜り込む。
昨日見た青と紫の紫陽花が朝露に濡れた様子を語る。
「僕は君のもたらす朝を知らない」
「僕はあなたがもたらす夜を知らない」
明日帰ってきたら話すよ、と兄は弟に微笑んだ。宝石のように瞬く天の星と小夜啼鳥の声の話をするよ、と出掛ける弟に言う。
裸足で歩く弟に付き従う朝の光で下界が照らされ始めていた。
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2019.9